2つの週末 (chapter 1)

日曜日。僕は2つの素晴らしい週末に出会った。
今日はそのうちの1つを紹介します。


A Weekend In The City

A Weekend In The City

Bloc Partyは新作で、変化と進化、さらに深化までも同時に成し遂げた。
1stで鳴らされた「静かな警鐘」から2年。

Silent Alarm

Silent Alarm

より複雑な部分まで世界を描き出し、広域に警鐘を鳴らすことに成功している。
都市の週末。欲望。狂乱。狂ったリズムを脈打つ現代社会に向けられた警鐘。
冷たい音像の中に浮かび上がる熱。それは叫び。痛みに寄り添う温もり。
このアルバムによって、多くの人が生活や考え方に問題意識を持って、
多くの傷ついた心が少しでも救われることを願う。


BjorkRadioheadなど前衛的なアーティストのエッセンスを吸収しながらも
彼らの音には圧倒的なオリジナリティ(確立された世界)がある。
吸収されたエッセンスは完全に咀嚼され、五感に突き刺さる強烈な印象を残しつつ、
前衛的な手法は、完全にポップネスに昇華されている。


本作は00年代の名盤として後世まで語り継がれるに違いない。
少なくとも僕は語り継いでいると思う。これを超える作品が2007年に出るだろうか。
そんな余計な心配をしてしまうほどに、このアルバムは素晴らしい。
全ての曲が強力な個性と普遍性を持ちながら、一枚の作品としてのまとまりがある。


各パートが好き放題やっているようで、
絶妙なバランスで音像を構築していた前作とはうって変わり、
サウンド全体を指揮するような手数の多いトリッキーなドラムが、
今作では全体に調和する形に収まり、
ギターも精巧な硝子細工を全体に散りばめるような趣向を強めた。
そして何より変化したのはケリーのヴォーカル。
こんなに魅力的な歌い手だとは思っていなかった。
1stではサウンドの影にやや隠れ気味だった彼が、
よりメロディアスに、ソウルフルに、歌い上げるようになったことで、
サウンド全体の調和を再構築する必要性が生まれたのではないだろうか。
つまり「ヴォーカル+ギター+ベース+ドラム」→「ヴォーカル+バックトラック」
というシンプルな音像構築へのシフトが見られるように思う。
協調性を見せつつ、より高度な次元で複雑に結びいた各パートが、
以前よりも自然に溶け合い、三位一体となっている印象を受ける。


「1stとは違うものを創りたかった」と彼らはインタビューでも話していたが、
変化が必ずしも成功を生むとは限らない。
しかし彼らは居心地の良い椅子に深く腰をかけるようなことはしない。
その音楽に対する真摯なアティチュードには、とても信頼が置ける。
きっとこれからも、新しいことに挑戦しつづけてくれるだろう。


早くも3rdアルバムが楽しみだ。


とりあえずそれまでは、この作品を聴き倒そうと思う。
文句なしの名盤。現在までに出会ったなかで一番好きな音かも。


★★★★★