斜いた陽のなかで

灯りが少ない町のはずれを、車ですり抜ける。
カーステからはNada Surfの音楽がきこえる。
繊細ながら強い意志を感じさせる素敵な音だ。
3曲目の「Always Love」のイントロにさしかかる頃、
何かがボロボロと崩れ落ちた。
その瞬間を僕は はっきりと覚えている。
張りつめた6弦が、肌を切り刻むように、
それは一瞬に、しかしはっきりと


The Weight Is The A Gift
僕の呼吸を止めた。



昼間は友達と彼女と3人で談笑。
寒くても、ジェラートは美味しい。
カシスとチーズの2色の渦が、カップのなかに巻かれていく。
僕に限ってはそれを見ているだけで
何時間でも退屈せずに過ごせそうな気がした。
そんな憂鬱の味に巻かれながら
空を見て、時計を見て、携帯を 見る。
繰り返す波。終わらない風。笑顔。デリート。意味は?
Nothing.
無知で許された景色。
繰り返すまばたき。
1秒間の休符のあと 一拍前をかき消すように、
カシスの甘酸っぱさに、神経をかき集める。


“Always love. Hate will get you every time.”


車窓に映る踏切の赤いランプ。
夜汽車はまるで銀河鉄道のように、闇のなかへ吸い込まれる。
それとともに、僕の心もふらっと誘われそうになる。
幾つもの痛み。忘れてた手綱。
何度繰り返しても、終わらない白昼夢。
それから醒めるたびに、
羽根をなくした鳥のように。


―ぼくはそらへとおちていく


さっきの列車は、何処へ向かうんだろう。
その先には終着点があって、
きっと彼らの居場所がある。


だけど、
僕の乗り込んだ列車に、終着点など在るのだろうか。
昔見た映画のワンシーンのように、
崖から 「そらへおちていく」。
そんな形のない映像が、頭をかすめる。


だってこのレールは 糸のように細くて
長い吊り橋のようなバランスで成り立っているから
神様がふっと息を吹きかけるだけで、いつも千切れそうになる。
そしてこの循環は
美しい花と愛ゆえの運命
その絶対的な優しさが止まない限り
止むことはない 雨
しかし天使からその羽根を奪うことなど
ケージの中の小鳥と同じ
それは 美の終末。そして愛の終末。


だから
この心は微笑んだまま
すこしずつ張り裂ける
それは痛みでもあり、悲しいくらいに、幸せでもある。


そのまぶしさは やがて血で染まるラストシーンへ…


この線路を全うする道しか 僕には見当たらない。
たとえ、次のカーブの先に 崖があるとしても。


ボンヤリと ただ淡く 絶望的なその愛で








「ニーナの為に」


未来 祈り 破滅について
孤独 微笑 狂気について
君はとても可愛い人で 何故か俺は泣きそうになる


砂漠 拒絶 綺麗な心
不能 欠落 性的欲望
君はとても可愛い人で 何故か俺はそれを失う


そして閉ざして 何も無い
ボンヤリと ただ淡く 絶望的なその愛で


ニーナ 笑って
MEAN STREET

小指 性器 青いシュークリーム
注射 白夜 地下鉄の夢
君はとても可愛い人で 何故か俺は泣きそうになる


いつか君に付けた手の傷
空に青を 舐め合う傷を
君はとても可愛い人で 何故か俺はそれを失う


あの日失くした むしろ僕達は
ボンヤリと ただ淡く 絶望的なその愛で


ニーナ 笑って




ART-SCHOOL



今年もお世話になりました。
あなたに、そしてあなたに、ありがとう。



引用: Nada Surf「Always Love」
ART-SCHOOL「斜陽」「ニーナの為に」