Beautiful Noise

Finally We Are No One


曇り空の帰り道。日が長くなってきたみたい。
どこか冷たい灰色は耳に注がれるノイズとあいまって、写真で見たアイスランドかどこかを彷彿とさせる。
深く、音に腰掛けると心地良い安らぎ。
エレクトロニカの無機質なビートと、ムーグの温かな電子音に包まれる。
音楽は、人がどれだけ背をもたれかけても表情を変えない。
そこにあるのは、絶対の心の解放。
完全な(都合の良い)第二者の存在を(そこに体温はなくとも)感じることができる。
そういうことを考えるだけでも、音楽とは、芸術とは、なんて素晴らしいものなんだろう。
そして、それを作り出す人間とは、なんとエゴイスティックなものなのだろう。


最近はインストゥルメンタルを聴くことが多い。
言葉は時に強い異物感をまとい聞き手に向かってくる。
いつも同じ言葉、同じ型に心を当てはめることで心を救える人は、とても強い人なんだと心底思う。
インストゥルメンタルには、当然ながら言葉がない。
だから、自由に心の声を投影できる。そのとき、その場所、その状態に合わせて…
MUMの「Slow Bycicle」を聴きながら、そんなことを感じていた。
ギザ、クリスティーン姉妹の声はなくとも、彼らの音楽は美しい。