種をまけば、芽が生えることがある。
しかしまかなければ、確実に生えてくることはない。


地面に顔を出した芽はやがて幹となり、枝を生やす。
枝は葉をつけ、そして実をつける。
実は熟し、枝元を離れ、地面に落ち、やがて腐る。


その繰り返しの中に残るものは?
地面で朽ち果てた果実の意味は?


群がる分解者たちが予期せぬごちそうに喜び、踊る。
彼らの食道を通り過ぎ、果実はたくさんの糞となる。
そしてその糞は良質な土壌となり、木々に栄養をもたらす。


かつて小さな芽だった木は、今では大きな根を生やしている。
枝には鳥が群がり、幹には豊潤な蜜を求め、昆虫がやって来る。
住み心地良い土壌のおかげで、にぎやかな木々に囲まれた日々…。


気づけばはじまりはちいさな種だった。



そんな人生に憧れる。